猫沢エミのインスタグラム(necozawaemi) - 3月1日 08時58分

私は日本に暮らしていたとき、真夜中によくいろんなことを、ひとり取り止めもなく考えていたなと、ほんの3週間前が少し懐かしい。

長いひとり暮らしを経て、ある日急に彼との生活が始まった。今振り返ると、数日ではあるけれど、やっぱり最初期の私はまだ混乱の中にいて、なにもかもが本来のパリのリズムに乗り切れていなかった。

そりゃそうだ。あれだけの手続きをこなしたあとに、猫とある日突然フランス🇫🇷なわけだから。

彼と私はコロナにスタックされたまま、私たち史上いちばん会えない2年を過ごした。そのなかでの、一生を左右する移住に踏み切るにはかなりの決断がいった。

人間って長らく人に会えないと、おかしな猜疑心とか、負の感情を抱きがちだ。私と彼も、これまでになかった心のすれ違いが起き始めた。「もう限界だ。ここで彼と生きるか、ひとりで生きるか決めないと、どちらもダメになる」と真剣に思った結果が、今回の移住だったわけです。

移住前の2ヶ月は手続きと引っ越し作業の嵐で、彼とも必要事項の確認以外は、1週間に1回まともに話せればいいような状態だった。

本当は、この時期にもっと話して、今回の移住の喜びを分かち合うべき時期でもあったけど、コロナの状況に加えて、本当に何もかもがギリギリの進行で、そんな時間はなかった。

私はコロナ前の彼を信じてみようと思った。頻繁に会っていた時の彼が、本来の彼だ。そして私も、たくさんの手続きを終えてパリでホッと一息ついた顔の私が本来の私だ。

今、お互いが本来の自分に戻りつつある。互いが当たり前に近くにいた時間の中へ。やっと本来の私たちが持っていたテンポを思い出して、呼吸が合ってきた感じ。

長い長いトンネルの、もしかしたらこれが本当の終わり。

私たちが愛してやまない、ふつうのパリの新しい生活の始まり。

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