野村真季のインスタグラム(masaki__nomura) - 11月13日 18時26分


【長文です】

休日の月曜日

私は休みだけれど、子どもたちは週明けの登校で朝は慌ただしい。
6時に起きてお弁当と朝食を作り、中学生の娘は用意しておけば一人で勝手にやってくれるけれど、小2の息子はそうはいかず、食べるのも公文の宿題も「隣にいる」というのが必要になる。

朝8時に二人を送り出すと、週末の疲れが一気に押し寄せて、あれもやりたいこれもやらねば、という私の意思に反して、体からの「横に横に…」という声を無視できるはずもなく、引きずられるようにして眠りにつく。
そうしてあっという間に午前中が終わってしまうのだ。

普段放課後クラブを利用している息子も、私が休みの月曜日は学校からそのまま帰ってこられるのが嬉しいらしく、14時半には戻ってくる。

睡眠で得たいくばくかの活力で溜まっている家のことを。そう、今日は先週末にいきなり冬になったことで使わなくなったブランケットを洗濯しなければならないのだ。
家に帰ってきた息子に、外でドーナツ食べようと誘いブランケット4枚抱えてカフェ併設のランドリー屋さんに向う。
そうして息子はドーナツ、私はコーヒーののんびりした1時間半を過ごす。

道路に面した席に座り、後ろでは大型洗濯機のブーンブーンと回る音が響いている。平日の午後なのに、ほぼ満席なのが意外だった。

教育に関する本を昼から読み始めたのだけれど、
非認知能力の重要性について、他者を理解することは自己の内面を理解することにつながり、内面の理解が自己のコントロールする力にもつながるという箇所を読んで、はたと頭の中のイメージが繋がった。

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先週土曜日、『猫沢家の一族』(集英社)を執筆した猫沢エミさんと下北沢のB &Bにて対談させて頂いた。
@猫沢エミ

『猫沢家の一族』では、猫沢家の、全てにおいて“規格外”の祖父・父母の豪快なエピソードが並んでいる。常識の枠に捉われない行動や文言が予想の斜め上をいく面白さ。
かなりの「奇人」(失礼!)でも、不思議と人としての温かみや人間性を近くに感じるのは、
単なるおもしろエピソードではなく、そこに長い時間軸が加わり家族としてというより「個として」受け止めたエミさんの深い洞察力が、それぞれの登場人物を魅力的に(というより面白く?)見せているのだと思う。

家族の問題というのは、エミさんがトークショーでも言っていたけれど、「良い」という形容詞が無意識につく故に「家族」というつながりはその「透明な圧」に苦しむことになる。「許す」という行為が「自分自身も許す」ことになるという、経験してきたからこそ言える重みのある言葉に、私だけではなく会場にいた方々も深く頷いていた。

トークショーが終わってからも、
エミさんのこの観察し尽くして理解する不思議な力について、
そしてこの規格外な家において、どうして至極真っ当で地に足のついたエミさんが育ったのかと考えていた。
以前の著書『ねこしき』では、
かつてエミさん自身は生活も心も立て直すために、本業であるミュージシャンや執筆の仕事から離れ、お弁当屋さんで手を動かし体を動かし、そして大事なもの必要なものを見極めて生活を変えて、自分の力で人生の舵を切る様子が書かれていた。
自分の力で生きようと真摯に向き合う姿は、ご両親の計画性のない(と書かれている)金銭感覚の欠如とは対極のものだ。

先の問いの手がかりが、
“非認知能力”に関するくだりに結びつく。

良くも悪くも目の前で起きている事柄を観察し理解する(そして笑いに変える)術を小さい時から否応なしに身につけてきたエミさんにとって、
人を理解することを通して、自己の理解につながり、結果として「自己コントロール力」を高め、自分の人生を生きることにつながっているのではないか…?
エミさんが猫沢エミたる所以は、やはりこの猫沢家で生まれ育ったことに帰結するのかと。

「私」が「私」を生きることを諦めない強さと同時に、一度決めたことだって変えたっていいじゃない!という鷹揚さを併せ持つのは、底に人としての愛情の深さがあるからだろう。

かつてエミさん宅にお邪魔した際に、お酒が入り夜も更けていく時間、この生きにくい世の中で子供を育てることの難しさを聞いた時、
エミさんは「愛情一択ですよ」と即答した。

『猫沢家の一族』のあとがきの一節、私は大好きだしこの本のことをよく現していると思う。

「つまり、愛はあったのだ。あんな家でも、あんな親でも、どんなにそれがいびつで奇妙な形をしていようが、そこに愛はあった。」

『猫沢家の一族』は家族のおもしろエピソード(私は特にヅラを投げ合う「ヅラスビー」の話が好きです)もさることながら、あとがきもすごくいい。
猫沢家のご両親を最期までしっかり看取り、長きに渡る一族の破茶滅茶さも終わりを迎えた、”闘いの後”のような平かな境地がそこにある。
帯にある「笑って、ゆるして」は実はすごく深い言葉なのだと気付かされる。
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そんなことをつらつら考えて書いていたら、乾燥機も終了。
ふかふかのブランケットを抱えて、待つのに飽きた息子と帰ろう、日も暮れてきた。

#猫沢家の一族


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2023/11/13

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